『
クドわふたー』アレンジアルバム『
Albina -Assorted kudwaf Songs-』。
ゲームブランド
Keyが送り出した作品の1つ『クドわふたー』の楽曲の一部が、同作品の作曲を担当した
清水準一さん自らの手によってアレンジされ、収録されたのがこのアルバム。
それは、大きな“可能性”を、私達に示したアルバムです。長らくコミックマーケット79における限定販売に留まっていたこの『Albina』でしたが、
2011年12月29日、ついに一般販売が開始されました。
しかし、この一般販売盤は
収録曲・曲順が一部異なり、また型番も別(C79盤:
KSLA-0066 一般販売盤:
KSLA-0078)のものとなっているなど、ある意味別のアルバムとなっている感も強いです。
内容が若干でも変わったKSLA-0078盤は、果たして『Albnina』と呼べるのか。
そう思う方も少なからずいるはずです。
ですが、曲単体で見ればその内容は同じ。
この記事では、『Albina』一般販売を記念しつつも、あくまでも私自身が所有している
“KSLA-0066”の『Albina』について、その簡単な紹介や感想を綴ってみたいと思います。
集められた“可能性”
タイトルにも書かせてもらいましたが、このアルバム『Albina』は、それ全体として大きな“
可能性”を私たちに見せてくれたアルバムだと考えています。
まずはその
ジャケットイラスト。
『クドわふたー』の原画を手がけた
Na-Gaさんによるこのイラストを見ただけで鳥肌が立った人も多いはず。
明言は避けますが、この1枚のイラストだけでも多くの可能性を私たちに考えさせてくれます。
そしてもちろん、
曲自体。
クドわふ時点ですでに完成されていた楽曲たちでしたが、今回はまた別の魅力を味わうことができます。
まさに、曲の持つ可能性を引き出したかのよう。
原曲とは異なる雰囲気、あるいは異なる方向性へと変わりつつも、雰囲気だけを変えただけでなく、メロディーの持つ良さをきちんと生かせている。
そこまで大胆なアレンジはないにせよ、「これは違う」と思わせるようなアレンジが(少なくとも私にとっては)ないあたり、非常に完成度の高いアレンジアルバムと言えそうです。
最後に、もう一つの可能性。
……があるのですが、これについては後回しにしましょう。
生まれ変わった楽曲たち
前置きはこれくらいにして、肝心の曲について簡単に紹介しましょう。
1つ注意として、以下に挙げる
曲順はあくまでもC79盤(KSLA-0066)のものだということは頭に入れておいてください。
一般販売盤(KSLA-0078)は曲順や収録曲が変わっていますので。
特段音楽に明るいわけでもなく、むしろ無知に近い人間の感想なので、理論的とか音楽的というよりはもっぱら感情的な感想となっています。
むずかしいかんそうはかけないよ!←
あ、ちなみに、今回のボーカル化曲については、作詞が全て
魁先生となっています。
(元から歌詞のあった「星屑」は除く。こちらはシナリオの
城桐央さんの作詞)
【注】
――「曲名」……アレンジの元となった原曲
01. Overture ――新規収録
新たな始まりを感じさせるような、爽やかで軽快なリズム。
すっと染みこむそのメロディーは、耳に残りやすいキャッチーさはあるものの、だからといってくどくはなく、序曲としてちょうどいい軽さです。
あくまでもそれ自体が目立つのではなく、これから始まる『Albina』についての期待をふくらませるかのような役割を持っていますね。
短いながらも魅力が詰まった名曲。02. one's word (歌:鈴田美夜子) ――「One's Future」 『クドわふたー』OP曲「One's Future」のロックアレンジ。
原曲は、Key作品のOPにしてはキャラソン過ぎる、という批判も多くありました。
歴代OPの中でも、人前で聴いたり歌ったりするハードルはずば抜けて高いですからねー。
一方、こちらのアレンジは、普通にOP曲として使用されていても違和感がないような、かっこいい仕上がりに。
歌詞の変更もあって、キャラソンキャラソンした雰囲気は一掃されています。
クドの曲ではなく、鈴田さんの曲、といった印象。
もちろん歌詞自体はクドわふに関連したものなわけですが。
元々考えられていた「One's Future」は、こちらに近いような曲だったと聞きます。
ということは、この曲は「
もしわんずふつれがロック調に仕上がっていたら……」という可能性を示したものではないでしょうか。
アニメ版ではこちら版OPでとかそういう可能性はないですかねそうですね←
03. アルビナ (歌:Duca) ――「Trampoline Girl」 氷室さんテーマ曲のボーカルアレンジ。
このアルバムの(一応の)表題曲なだけあって、イントロからしてかなりキャッチーな仕上がりに。
原曲「Trampoline Girl」はその名の通り弾むようにポップでややコミカルな曲調でしたが、こちらはまるで
走るような曲。
ロックテイストということもありますが、歌詞の内容も相まって、非常に疾走感あふれる曲となっています。
特に印象的なのが、イントロやサビ、間奏で入ってくるストリング。
これが、全体の疾走感や爽快感を盛り上げています。
少し話は変わりますが、皆さんにも好きな食べ物や味付けというものがあると思います。
それを心ゆくまで食べられたら……?
もう脳内が「うまい! うまい!」という感覚に溺れた状態、まさにヘヴン状態になれるはずです。
音楽にも、これに似た感覚というのがあると思っているんですよね。
自分好みの曲調の曲を聴いていると、脳内が“うまみ”を感じているかのように幸せな刺激を受けている状態になる。
私は、まれにこういった曲に出会うことがあります。
この「アルビナ」という曲はまさにそれ。
イントロからAメロからBメロからサビから間奏からDメロからアウトロから……。
もうずっと脳が「うまい!」信号を放ち続けているかのような感覚に陥ります。
体も自然とノってきます。
超キャッチーなんですけど、何度聴いていても不思議と飽きない。さすがは表題曲、と思わされる魅力的な曲です。
04. 裏山小径 ――「At the Mountain Behind」
原曲がものすごく好きな曲のアレンジ版。
ゲーム内では昼のシーンでよく流れていたのが原曲です。
ゆったりとしつつも、しかし退屈は感じさせない、どこか胸が満たされているかのような時間を想像させるメロディーですね。
同時に、真夏の昼間の暑さや気だるさのような感覚も伝わってきます。
曲単体としても、BGMとしても、素晴らしい曲です。
アレンジ版では、真夏の昼間というより、晩夏、あるいは夏の夕暮れを感じさせるような、
落ち着いた曲調になっています。
楽しい時間を過ごしている最中の幸福感ではなく、楽しい時間を過ごした後の余韻・心地良さ。
それでいて、終わりの寂しさや回想による満足だけでなく、これからもまだまだ楽しい時間は続いていくような、未来に向けた期待というのも感じさせられる、魅力的な曲です。
「幸せで胸がいっぱい!」というはちきれんばかりの幸福感ではなく、
穏やかだけど満ち足りた、大切な時間を過ごした時に得られる暖かな気持ち。
こういった感覚を、クドわふにおける清水さんの曲は与えてくれます。
05. 星降る丘 ――「星守歌」
もともと民族的な雰囲気があった挿入歌「星守歌」を、元のイメージとはまた異なる民族的な楽器を用いて、独特な持ち味を出すに至ったのがこの曲。
穏やかで暖かな時間というのを、聴き手に与えてくれます。
静かな夜に聴きたいですねー。
どことなく『
Ma-Na』の「夏影」を彷彿とさせますね。
06. August Wind ――「August Green」
原曲からして大好きな曲。
元の曲(さらに元を辿れば『One's Future』ですが)の「August Green」は、子供がはしゃぎまわっているかのような、楽しさに満ちあふれた軽快なリズムの曲。
なぜこれがゲーム中にて殆ど使用されなかったのかが疑問でならないほどです。
一方、こちらのアレンジでは、もっと大人びたジャズっぽい印象に。
うきうきした気分は同様に伝わってきますが、大人が
優雅な休日を過ごすかのような変貌ぶりです。
キラキラした高級感のようなものも感じますね。
どことなく原曲よりも大人びた印象の曲が多いのは、ジャケットと関連があるのか、などと考えてしまいます。
07. Sunday Morning Sunlight ――「Sunday Morning Dance」
これまた原曲からして私が大好きな曲。
この曲のアレンジが収録されるのを知って、「まぁ当然だろう」と平静を保ちつつ大喜びしていました←
原曲はギターのサウンドが軽やかで、夏休みの楽しい朝の到来を告げるかのような、ウキウキワクワクとした曲でした。
ゲーム内では毎朝これを聴く度にクリックする指が止まっていましたねー。
こちらのアレンジでは、ギターはギターでもエレキが前面に出た、ややロックな曲に。
イントロの煌びやかなサウンドもあり、夏休みは夏休みでも、どこか
リゾート地などに行ったかのようなイメージ。
やや高級感というか重厚感というか、そういうものが出た印象です。
休日の午後に聴きたい曲。
08. 鶏肉の唄 (歌:あさり☆) ――「grief」 同じメロディーながら、その印象はまったく異なるという、『Albina』の可能性の代表例のような曲。
原曲は暗く哀しく、そして時に感情の昂ぶりをも感じさせる曲です。
当然ながら、ゲーム中でも哀しいシーン、絶望的なシーンなどで使用されていました。
一方、今回のアレンジ版は、
暖かく優しい曲となっています。
温もりが染み渡るかのようなこの曲ですが、ボーカルアレンジ版ということもあり、その歌詞にも注目したいところです。
この歌、その曲調とは裏腹(?)に鶏肉について感謝する歌となっています。
「(鶏肉の)温もりが(胃に)染み渡る」かのような曲です。
ぶっちゃけギャグです(ぉ
まあ、歌詞はギャグとしても、曲自体は普通にいい曲ですので、原曲とのギャップだけでなく、歌詞とメロディーのギャップを楽しんでみるのも面白いでしょう。
「grief」が脳内再生されそうな時に聴いてみてはいかがでしょうか。
09. Fragment (歌:鈴田美夜子) ――「Adagio for Summer Wind」
クドわふを代表する名曲の一つ、「Adagio for Summer Wind」のボーカルアレンジ。
これはクドわふ本編をプレイしていないと魅力が伝わりにくい曲となっています。
つまるところ、歌詞が完全にクドわふの内容とリンクしています。
その完成度は、
『クドわふたー』のエンディング曲と言われても違和感がないほど。
原曲が持っていた包みこむような優しさはそのままに、より壮大なメロディーに仕上がっています。
歌詞もまさに本編後を彷彿とさせる内容ですね。
『Albina』の、あるいは『クドわふたー』のもう1つのエンディング曲として考えると、やはりこの曲順なのだろうと思います。
10. Hoshizora ――「Hoshizora」
隠れた名曲「Hoshizora」のアレンジ。
そもそも「Hoshizora」自体が「星屑」のピアノ伴奏を元にした曲なわけですが、とりあえずそれはおいておきましょう。
また、発売当時、クドわふ初回特典のサントラに収録されていなかったオリジナル「Hoshizora」かと期待した方も私を含め大勢いましたが、そこはやはりアレンジアルバム、基本はアレンジ曲を収録ということになりました。
そもそもの「Hoshizora」がそれ単体での鑑賞を目的とした曲ではなかったため、今回はピアノ“伴奏”ではなく、1つのピアノ“曲”となっています。
「星屑」のピアノアレンジ、と言った方が近いかもしれませんね。
美しさと力強さを持った旋律はそのままに、ピアノ曲として生まれ変わっています。
星空を見上げながら聴きたい曲です。
上記「Hoshizora」の後、長いブランクを挟んで同一トラックに収録されているのが、個人的クドわふ至高の曲「星屑」。
今回収録されているものは、特にアレンジ版といったものではありません。
あえて言うなら、
パワーアップ版、といったところでしょうか。
サントラ収録版から、さらに音を向上させたものが収録されています。
その良さは、「星屑」ファンならイントロからして分かるはず。
1度こちらのバージョンを聴いてしまうと、サントラ版の音が弱く感じてしまいます。
清水さんのこだわりでしょうね~。
ちなみに、一般販売盤では、この「星屑」は1つのトラックとして分割されるようです。
聴きにくいといえば聴きにくいですからね(汗
※一般販売盤『Albina』(KSLA-0078)の収録曲01. Overture
02. one's word
03. アルビナ
04. Fragment ←曲順変更
05. 裏山小径
06. 星降る丘
07. August Wind
08. Sunday Morning Sunlight
09. 鶏肉の唄
10. Hoshizora
11. 星屑 ←単独トラック化
12. Fragment Kud.ver ←新規収録
“Albina”
いくつもの可能性が詰め込まれた名盤、『Albina』。
そこに示された、もう一つの大きな可能性とはなんだったのか。
それは、“Key所属の作曲家清水準一”さんとしての可能性です。すでに知っている方もいるでしょうし、やはり知らない方も多いと思いますが、清水さんはKey(VisualArt's)を退社されています(フェイク情報でなければ
→
清水さんのTwitterアカウントの紹介文
『クドわふたー』における清水さんの曲は、どれも素晴らしいものばかりでした。
繊細で、優しくて、温かみがあって、でも力強くて。
ただし、あくまでもこれは“Key所属作曲家”として作曲された楽曲なのかもしれません。
清水さんが元来、あるいは他にどういった曲を書くのか、私は知りませんので。
もしかしたら、この方向性での音楽は、『Albina』で終わってしまうということもありえます。
もし清水さんがこれからも“Key所属作曲家”として活動されていたら。
その曲が今後のKey作品にも使用されたら。
『Albina』は、そういう“
訪れることのなかった可能性”を、私たちに示してくれています。
……このアルバム名にも何らかの意図があったのではないかと考えてしまいますね。
もちろん、『Albina』と命名したのが清水さんご自身なのか城桐さんなのか魁先生なのか分からないので、これは勝手な推論に過ぎませんが(汗
ただし、清水さんの作曲活動自体が終わったわけではありません。
まだまだ、もしかしたら今までよりもずっと広い範囲で活動されていくかもしれません。
そういった
新たな“可能性”もあるのです。
以前、ニコニコ生放送のKey組曲にて、『Albina』より「アルビナ」が流された時、こういったコメントが流れました。
「しみっちょおおおおおおおお」
「ヤンKeyきたああああああああああああ」
「清水ううううううううう」
「ヤンKeyしみっちょおおおおおおおおお」
「しみっちょキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!」
「しみっちょ元気かー」(by馬場社長)←
「原曲のトランポリンガール好きです」
「アルビナぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
「AlbinaのFragment 最高だった」
「このCD好きだ」
「このCDの一般販売はまだですか?」多くの人に好かれていた『クドわふたー』での清水さんの楽曲。
あるいは、清水さんご自身。
新たなる可能性、その成就を願って。
同時に一般販売が開始された『クドわふたー』のオリジナル・サウンドトラック。こちらも必聴の完成度。ただしジャケットは前の方g(ry関連記事:
『クドわふたー』のかんそうだよぉ -音楽編-
・・・というより新年明けましておめでとうございます。
冬コミではたくさん人がいるし、品はたくさんあるし、で
なんとも苦労しながらも充実したものになりました。
つのがわさんはどうでした?満喫できましたか?
さて内容に戻ってみますが、アルバム中々のクオリティーですよね。
名曲尽くしのこのアルバム、買わなきゃ損ですよね。
そして何より、つのがわさん独自の分かりやすく、
とても丁寧に綴っていて、まとまりのある説明。
これには僕はいつも助けられています・・・汗
またお話しできる機会があれば幸いです。
長文失礼しました。