古参の方からすれば知っていて(あるいはプレイしていて)当然の作品でしょうけど、最近の謎のKeyファンの拡大期から入ったファンにとっては、ほとんど馴染みのない作品でしょう。
“Key作品”にして“Key作品”に非ず
「“Key作品”に分類される」と言った直後に、「“Key作品”に非ず」とはいかがなものか……と思われた方もいらっしゃるかもしれません。
しかしながらこの作品、Key作品と全く同一視してしまうのは危険です。
「Tacticsだから当然じゃね?」という理由だけではありません。
基本的にはKey作品とはかなり異なる雰囲気を持っているのです。
『MOON.』は
学園ものとか恋愛アドベンチャーものではありません。
むしろ陵辱ものに分類されますね。
当然その描写や展開も
完全に18禁なので、性的描写に抵抗のある方・耐性のない方は避けたほうが無難です。
この点、Key作品のイメージを持っている方からすれば、かなりのギャップになると思います。
抵抗といえば、作品の古さもネックです。
「最近の作品と比べると完成度が……」というのは、まあ仕方ない部分もあります。
容量の都合等もあったでしょうからね。
それに加え、90年代臭(なにそれ)も強いので、今プレイするとだいぶ古臭く感じてしまうかもしれません。
逆に「やべ、なんか懐かしい」と思う方もいるかもしれません。
総じて見れば一般受けはせず、ある程度プレイする人を選ぶ作品ですね。
ただ、そこはやはりKey設立メンバーが多く関わった“Key作品”。
その根底には、
最近のKey作品にまで受け継がれているものが流れています。
これは、まあプレイしてもらえれば分かると思うので、ここでは詳細について触れません。
容易には人を寄せ付けない場所、その深奥にこそ、大河の源流を見出すことができる……といったところでしょうか。
ダーティーな中に光るもの
さて、ここで念のため弁解を。
この『MOON.』という作品、あくまでも一般受けはしない作品というだけであって、決して作品自体が気味の悪いものだとか、そういうことを言いたいわけではありません。
これだけはまず言っておきたいところ。
むしろ、私は
面白い作品だと感じました。
パッと見の雰囲気はKeyのそれとはだいぶ異なりますが、それはそれでむしろ面白い。
もう少し修飾するのであれば、なんだかわくわくするような面白さ(というと語弊がありそうですが)を感じました。
ダークでスリルを感じるシナリオの進行と、ゲーム性のあるシステム。
なかなかに尖った展開は、まさに初期の作品だからこそといった趣。
しかし、古い作品にしては意外や多い全体のボリューム。
それらを盛り上げるのは、作品の雰囲気とマッチしたBGM。
そして生み出される、“面白さ”。
……非常に抽象的で恐縮ですが(汗
個人的に特にポイントとなるのが、
高いゲーム性を有している点ですね。
『
ONE ~輝く季節へ~』以降の作品は学園(恋愛)アドベンチャーがメインであり、そうでない場合でもノベル形式のものがほとんどです。
ミニゲームが収録される場合もありますが、基本的には文章を読み進めることでゲームを進行させていきます。
この『MOON.』では、もちろん文章を読み進めていくことが大半を占めますが、もっとゲームらしい移動システムなどが搭載されています。
まあ、これ自体は大して高度なものではないのですが、単に文章を読み進めるより行動の自由度が高く、これがプレイヤーの
遊び心をくすぐるのです。
この部分は、後にKeyから発表された『
リトルバスターズ!エクスタシー』にも通ずるものがありますね。
ダーク、あるいはダーティーとでも表現されるようなシナリオも、怖いもの見たさに……などといった一種の
好奇心をくすぐるものがあります。
昨今話題の
某魔法少女もののように、人は暗い物語に惹きつけられてしまう特性があるのかもしれません。
……いえ、それとは関係ないかもしれません(どっち
特に終盤のとあるパートの不気味さは、『MOON.』の中でも随一のダークさを持つ内容となっています。
この部分も大好きですね。
そんな雰囲気であっても、単なる猟奇的なシナリオでは終わらせないのがこの『MOON.』。
まるでKey作品を彷彿とさせるような要素が、この作品のテーマとなっているのです。
……おそらく想像するのは難しいでしょうね(汗
初期の作品なのでまだまだ荒削りな部分が目立ちますが、十分Keyらしさを感じられると思います。
ここでの要素が後の“Key作品”へと受け継がれて行ったと考えると、何やら感慨深いものがありますね。
異端にして原点
“Key作品”と呼ばれる作品群の中でも、とりわけ異彩を放つ作品である『MOON.』。
しかしながら、それは間違いなく“Key作品”の原点と呼ぶに相応しい作品でした。
肌に合う/合わないは個人差があるので仕方ありませんが、もし未プレイ&こういった作品に抵抗を感じないKeyファンの方であれば、1度プレイしてみる価値はあると思います。
“
前田純”さんの曲が聴けるのも、一部の方にとっては大きなポイントになるでしょう(ぇ
個人的には、初期のバージョンのみに収録されているおまけRPGも、いつかはプレイしてみたいところです。